総務人事の日々

渋谷の中小企業で総務人事。本職は人材開発です。が、人事制度の設計からトイレのトラブル解決までなんでもやります。

人事の道理がすぐに通じることはとても少ないです。

多くの企業では社長、取締役は現場から上がってきた人のポストであることも珍しくない。だから経営者が経営のプロであるとは限らない。

もちろん、経営職に至るまでに現場で仕事を覚え、部下を持ちマネジメントを覚え、人材育成を覚え…と組織の上に立つために能力やモチベーションを形成していく過程を通っているはずです。

でもだからと言って「経営をやりたいかどうか」というのとは別の問題だと思います。

だから「経営者になりたい!」というモチベーションが弱くても当然です。

これは弊社の経営者たちを批判しているわけではありません。弊社の経営者たちは弊社の事業のプロフェッショナルです。この道の達人たちであることに疑問は差し挟みません。

 

奥歯にものの挟まった言い方をしていますが、何が言いたいのかというと、経営者に人事の道理を理解してもらうのはとても大変だ、ということです。

 

今期、人事評価を大メンテナンスしました。WindowsXPWindows7くらいの変更です。もともとあった人事評価システムはわたしが入社したときに作成したものなのでかれこれ5年以上使っています。5年も使っているといろいろなところにひずみが出てきます。採点方法、採点基準がずれてきたり、評価項目に解釈の幅が出てきたり。これはメンテナンスが必要だ、と担当の取締役と話してエイヤで改定しました。結局2年かかりました。

 

この担当取締役、弊社のなかでも腕利きで知られる人です。お客様からの信頼も篤く、事業にも通じています。弊社のことをよく知り、会社を変えていきたいという想いがとても強い人です。今回の改訂は彼と作業を行ないました。

当初のわたしの意図では、いわば行動経済学的に解決できると考えていました。採点する人の心理的傾向、採点される人は何を評価されたいのか、ある程度の仮説を持っていたのでそれに沿ってメンテナンスを行ないました。

 

担当取締役ともそれで話が進んでいたのですが…途中で彼の「想い」がぐぐぐっと出てきてその思うところをかなり反映する方向になりました。当初出していた問題点や課題はだんだんと後ろに下がり…。ある一定の方向性をもったものにはなりましたが、弊社の課題とはややずれるものになってしまったようにわたしは感じました。

 

そして上期の人事評価を実際に行ったら…。やっぱり。前の評価システムと同じ傾向が出てしまいました。社長を含む取締役と議論をしながら「やっぱり」と何度も思っていました。

 

…もちろん、織り込み済みです。すでに改修バージョンの改修手段は用意してあります。

人事の道理をすぐに理解してもらえるなんて思っていません。1回人事制度の構築をやっていただいて会社組織が思い通りにまったく動かないことを実感していただけたいい機会になりました。

もちろん評価自体が無効になるわけではありません。マネージャーたちが全力で採点してくれたものです。十分に使えます。

 

さて、来期に向けて改修を進めます。今度はもうちょっと人事の道理を前面に出します。