総務人事の日々

渋谷の中小企業で総務人事。本職は人材開発です。が、人事制度の設計からトイレのトラブル解決までなんでもやります。

なぜ学ぶのか

わたしは企業の人事として、社員教育に携わっています。研修を行うこともあれば学ぶ場としての職場に施策を打ったりします。

 

人はなぜ学ぶのでしょうか。なぜ学ばないといけないのでしょうか。

当たり前すぎてなかなか問われない疑問ですが、教育屋さんであればこれにそれなりの答えを持っていないといけないですね。

 

たとえばわたしたちのような人事担当者は企業で当たり前のように研修を行います。それは人材のレベルを向上させて業績向上につながります。本人のスキルアップにもなりますから、会社も本人もハッピーです。これがよく言われる「学ぶ理由」です。

研修講師の方が冒頭でよく言いますね。わたしも言ったことがあります。

 

しかしわたしはそれが学ぶことの本当の目的ではないと考えています。

 

わたしが考える学ぶ目的は「意味ある偶然に出会うこと」だと考えています。

プランドハプンスタンス理論(planned happenstance theory、計画的偶発性理論) というものがあります。スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア論のひとつです。

「キャリアは偶然の出来事、予期せぬ出来事に対し、最善を尽くし対応することを積み重ねることで形成される」

ゴールを設定してそれを達成するというキャリアでなく、場当たり的にも見えるような対応をしながらそのなかでキャリアを培っていく、というイメージです。

 

この考え方は、人が学ぶプロセスと密接に関わっていると思うのです。

「予期せぬ出来事に最善を尽くし対応する」というのは学習理論で言うところのストレッチ(難しい仕事への挑戦)がイメージできます。好奇心と工夫(PDCA)が必要です。偶然に起きたことを最大限に活用するという言い方もするらしいですが、自分の心をどんなことにもオープンにして、出来事からできるだけたくさんのことを学び、それを次の機会に活かす、というモデルはわたしは納得感があります。

 

職場に限らず、人間は生きていればいろいろな偶然があります。

出会った人、担当した仕事、指導された人、思わぬ進路選択、成功や失敗…。

 

これらの偶然のできごとを「自分にとって意味あること」と受け止めるためには自分のアンテナの感度を高めておかなくてはなりません。

何かが起きても「当たり前のことだ」「ああ、またか」「前に見たことと似ている」と受け止めていたらそこには運命の出会いはありません。いつも「これはなんだろう」と好奇心を持って受け止め、対応方法を真摯に考えることで人はバージョンアップしていきます。

 

世の中では誰が注目されているのか、どんな作品が受け入れられているのか、自分が人の役に立つために何を身につけないといけないのか…

そういう感覚でアンテナの感度を高めておくことで「意味ある偶然」に出会えるのだと思います。

 

学んでいない人は運命に出会えないとわたしは考えています。

 

だから、社員に学ぶように伝えます。

特に若いメンバーには強く言います。これからビジネスの世界の出来事をただこなすのでなく、自分で意味を見出し、やがてはその文脈で運命とも呼べる出会いがやってくるはずだと。だから学べと。