イノベーション人材の育成はできるか
「イノベーション人材」という言葉がHR業界界隈で話題になったのは、一昔前のような感じがいたします。
当時はスティーブ・ジョブズや孫正義といった既成の概念にとらわれずに変化を起こす人材というような意味だったかと思います。
そしてそれは「イノベーション人材育成」というパッケージになっていった記憶があります。わたしはそのとき、呆然としました。イノベーションとは既成概念にはないことをすることがその意味なのに、一体何をどう教えたらイノベーション人材になるのか…と。
わたしは元々研修屋さんですから、こういうネーミングで研修を売るのはとても理解できますが、その本来的な意味の倒錯っぷりにめまいを覚えました。
それから何年が経ったでしょうか。
流行り言葉としてのイノベーション人材は過ぎ去りましたが、経営課題としてのイノベーション人材は何も解決していません。現場ではイノベーションを起こせる人材が必要とされ、企業の戦略として、社会へのインパクトある貢献としてイノベーションがますます必要となっています。
「イノベーション」という一言で表現される現象がいかに難しいことであるか、イノベーション人材の流行から今日に至る間にみんな身に沁みたのではないかと思います。
弊社のHRについていろいろと考えていて、外部環境なども踏まえるとやはりどうしてもイノベーション人材に解を求めてしまいます。しかし先述の通り、わたしはそれは育成できるものではないと考えています。
イノベーション人材なるものが出現する方法は、環境を調えることしかないだろうと思います。イノベーション人材を育てるのでなく、イノベーティブな組織、グループを育むことが必要なように思います。
既存のものにとらわれずに発想し、挑戦し、失敗することを許容し合い、そこから学び合う、そういう組織です。こうして書くと至ってふつうのことですが、イノベーションがなかなか起きないことを考えると、このふつうのことがなかなかできないのだろうと感じています。